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  • makotokumei5

漁業所得の向上に向けて

漁業の成長産業化に向けて、国や業界団体が一丸となって取り組んでいますが、その中でも大切なのが、漁業所得の向上でしょう。


漁業所得が上がることによって、意欲や能力のある担い手や後継者が育って、活力ある産業となることが期待されます。一方で、漁業所得が上がらなければ、漁業を続けようとする人はどんどんと減りますし、イノベーションや新たな挑戦も生まれにくいでしょう。


今年の水産白書の62ページに個人の漁業者の売上から経費を差し引いた所得がのっていますが、漁業外の所得も加えた令和2年の事業所得の平均は、新型コロナウイルスの影響もあり年間134万円と、とても厳しい状況です。(なお、近年で最も個人の漁業者の所得が高かった平成28年は282万円でした。)


この金額では、収入安定対策事業などの予算の拡充を求める業界団体による要望の必要性も、分からないものではありません。


ただ、新型コロナウイルスによる影響は仕方がないこととはいえ、漁業が儲からないからといって、補助金で補てんし続ける構造は望ましいものではないでしょう。


最も大切なことは、どのようにすれば漁業者が十分な利益を上げられる構造を作ることができるか、現在の漁業所得が低い要因を分析して、その解決策を示すことと思います。


これは、沖合漁業と沿岸漁業によっても異なるでしょうし、魚種や地域によっても異なると考えられますので、漁業種類ごとに議論することが必要なものです。


当然ながらここで議論を尽くせるものでは到底ありませんが、極めて単純化して、なぜ沿岸漁業が儲からないのかを少し考えてみたいと思います。


まずは、生産面から、最も重要なのは、商品となる漁業資源についてと思います。近年、サケ、イカ、サンマ、ウニなど、多くの魚種で記録的な不漁によって、漁業者の収入に大打撃を与えているように、資源量が十分でなければ、売上を上げることはできないでしょう。


その上で、燃油や漁船などの価格が高騰していることにどう対応するのかや、コストを抑えるための効率的な操業体制となっているかについての検証も必要と思います。


次に、需要面では、魚に対する需要を国内外でどう作っていくか、需要に即した商品の開発や、日本の魚の価値をどのようにして消費者に伝えていくかといったことが考えられます。


最後に、構造面です。結局、水産資源が限られている中で、そこに多くの漁業者がいれば、一人当たりの所得は減ってしまいます。逆に、漁業者数が少なければ、一人当たりの所得は増えるでしょう。一方で、あまりにも漁業者数が少なければ、漁港や産地市場などのインフラをどのように維持していくのか、地域活性化や国防への影響などからも望ましいことではないかもしれません。そうしたことを総合的に考えながら、「望ましい漁業構造」を地域や魚種ごとに議論することが必須と考えます。




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