先日、ソウルで開催された韓国海洋研究所(MRI)とオーストラリア国立海洋資源・安全保障センター(ANCORS)の共催による漁業政策に関するワークショップに参加しました。
ワークショップには、韓国、オーストラリア、米国、日本の政府職員や研究者が参加しましたが、気候変動による漁獲量の縮小や漁場のシフトはいずれの国でも顕著であり、各国共通の課題であることが分かりました。
気候変動による不確実性が高まる中で、具体的にどのような管理が有効かはまだ明らかになっておらず、試行錯誤を行っている段階ではありますが、以下のような取組を行う必要があるとの議論がされました。
・変化とその影響を把握するための科学と質の高いデータ収集の重要性
・収集したデータをステークホルダーに共有する
・政策において、高まるリスクを踏まえた施策を講ずる(シナリオに基づいた計画が大事)
・より柔軟な政策(flexibility and adaptability)
・魚種ごとの気候変動への脆弱性や適応性を評価する。
・漁業者や関係者の能力構築
また、セミナーで興味深かったのは、韓国の漁業政策と日本の漁業政策の類似点です。
韓国 | 日本 |
・漁獲量は過去40年でほぼ半減 | ・漁獲量は過去40年で約3分の1に |
・漁業者数の減少 | ・漁業者数の減少 |
・水産資源の減少 | ・水産資源の減少 |
・2022年に水産資源管理法を改正(資源管理の強化) | ・2018年に漁業法の改正(2020年12月に施行。資源管理の強化が柱) |
・TAC対象魚種:16魚種 | ・TAC対象魚種:8魚種 |
韓国の資源管理施策の柱は、以下の通りです。
・藻場等の漁場の回復
・種苗放流
・漁船数削減
・TAC
・資源回復
・自主的資源管理
概ね、日本の資源管理施策と同様であり、韓国は日本の政策を研究して自国に取り入れることが多いため、おそらく日本の政策のよい部分を導入しているものと思います。
一方で、日本よりも進んでいると思われる部分もあります。
一つは、資源を管理するためには、適正な漁獲圧を維持する必要(漁獲圧が強すぎれば乱獲となりやすい)との考えの下、漁船数削減プロジェクトを1994年から進めていることです。
また、2030年漁業イノベーション計画というものがあり、その柱として、
・TACによる資源の回復
・補助金を削減して資源管理の強化
・イノベーションの促進
を謳っています。
日韓は多くの点でライバル関係にあり、漁業においては交渉で対立する場面もありますが、特に地球温暖化への対策の部分では利害が共通しているため、これまで以上に協働できることが多くあるのではと感じました。
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