水産基本計画の5年に1度の見直しが終わり、先週に閣議決定が行われました。
基本計画の中には、多くの施策がたくさん散りばめられることになりますが、それでも現時点での水産庁の方針の重点ポイントが理解出来ます。
5年前の計画と比べて進化していると感じる点は、特に以下の点です。
TAC対象魚種の拡大を始めとする、科学的根拠に基づく資源管理の推進
地球温暖化等による海洋環境の変化への対応
カーボンニュートラルに向けた取組の推進
漁船漁業の構造改革の方向性(沖合漁業における単一魚種の漁獲から複合的な漁業への転換など)
水産流通適正化法を核とするIUU漁業対策の推進
特に資源管理の推進については、利害の異なる関係者が多くおり、漁業経営への影響や、これまで行ってきたことを変えることへの抵抗感から、現場漁業者による理解がまだ十分に得られているとはいえない中で、水産庁が覚悟を持って取り組もうとしていることが伺いしれます。
資源管理の必要性自体を否定する人はほぼいなく、どのようなやり方で資源管理を行えば最も効果が生じるのかについて、議論が分かれている部分がありますが、魚種ごとの個別の状況を見ながら、関係者がテーブルに着いて忌憚のない議論を交わすことが必要なのだと思います。
また、基本計画の中で、「サプライチェーンのビジネスと人権に関する透明性の確保」を啓発していくことが含まれたことも、昨今の国際的な人権問題への関心の高まりを踏まえたものと思います。
一方で、一つ残念と思われる部分は、基本計画の中からトレーサビリティに関する既述がなくなったことです。
トレーサビリティについては、EUのように政府による義務として広く水産物や食品全般を対象とするのか、それともクロマグロのように付加価値が高く不正が行われるインセンティブも高い魚種に対象をしぼるのか、また水産物に付加価値を加えたい先進的な取組を行う漁業者や流通関係者が自主的な取組として行うべきかなど、まだこれから議論すべき点が多くあります。
そうした議論を推進して、トレーサビリティや水産業における電子化の推進によって、資源管理の推進、水産業の振興を行うべきと思いますが、水産庁も非常に多くの案件を抱えてることから、今はまだそこまで手が回っていないのだと思えます。
その部分を私達のような民間の団体が役割を担うことができればと思います。
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