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漁業の成長産業化に必要な視点②

前回の記事にて、漁業者一人当たりの漁業収益を上げるために、


収益=(漁獲量 × 販売単価)ー 生産コスト


で示される、①漁獲量、②販売単価、③生産コスト、の3つの要素のうち、①漁獲量については、資源の減少が懸念されるものの、漁業者数の減少が続いている中で、長期的には一人当たりの漁獲量は今より増えると予測されることを書きました。


次に、②販売単価についてですが、販売価格を上げることは、漁業に限らず、どの産業においても、簡単なことではないでしょう。


競合となる商品(他の地域や輸入による水産物、水産物以外の食品)がたくさんある中で、単に価格を上げても、売れないで終わってしまいます。特に足が早い水産物は、例え安くても、売れる値段で売らなければ、獲った意味がありません。


価格を上げるために必要なこととして、一般的に考えられるのは、商品の品質を高めて、ブランド化をすることだと思います。


しかしながら、飽食の現在では、ありとあらゆる美味しい食品が、比較的安価なものも含めてあふれていますので、品質が高い(鮮度のよさや、美味しいなど)だけで、売れ続けることは困難です。


そうした中で、一つ参考になるのは、久松農園の久松達央さんが述べられている「弱者の戦い方」です。


久松さんは、著書「農家はもっと減って良い!」の中で、小規模農家にとって、価格競争の土俵に乗らないのは勿論だけれども、だからといって差別化によって価格を上げようとしても、他によい商品は必ず出てくるので無理であり、差別化をせずとも購入してくれる「ファン作り」しか生き残る道はないと主張されており、実際、その方法で結果を出されています。


これは、小規模の漁業者が多い沿岸漁業にも、ほぼ同じように当てはまるものでしょう。


そして、そうしたファン作りのために大事なのは、「ストーリーの開示」だと思います。ストーリーがあるからこそ、この人を応援しようと思われるわけです。


幸い、日本の沿岸漁業には、ストーリーや魅力が溢れています。


地域の伝統的な手法、漁村の文化、どのような思いで漁業を行っているか、何を大切にして毎日を過ごしているか、そうしたことをストーリーとして伝えることによって、多少高くても自分はこの商品が好きだから買う、となるわけです。


特に、日本を訪問する外国人は、そうしたストーリーを求めて日本にやってきている訳ですし、それは日本人の消費者も同じと思います。特に今のZ世代と言われる若者は、物に不自由せずに育っていますので、何かを買う際の判断基準の中にストーリーが占める割合が大きいと言われています。


ただし、ストーリーを磨いて、上手に伝えるということは、簡単なことではありません。一人でできることでもありません。地域全体で、もしくは地域を越えて、議論をすることが大事ですし、そうしたことにノウハウのある人達の手助けも必要ですので、そのような取組に対する支援を国が行うことも大事と思います。


先日、ある漁業団体の幹部の方とお話をする機会があった際に、日本の沿岸漁業の将来像として、フランスのワインの産地のようにしたい、世界中の人がこの魚を食べたいと日本の漁村に訪れたくなるようにしたいと、語られていました。


そうしたビジョンはとても大切なものと思いますし、日本の沿岸漁業のポテンシャルを考えれば、それは十分可能なことと感じました。






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