大間産のクロマグロの不正(大間産以外のクロマグロを大間産として流通させることや、漁獲報告違反など)や、アサリの産地偽装、IUU(違法・無報告・無規制)漁業により漁獲された水産物の流通の可能性などを考えると、消費者の立場では、自分が食べる魚が本当に表示された通りのものなのか、正規に漁獲されたものなのかを知るために、トレーサビリティが導入されるとよいと考えます。
漁業者の立場からしても、トレーサビリティがあることで水産物の信頼性が高まり、ブランディングと組み合わせることにより、販売拡大の可能性があります。
しかしながら、トレサービリティ導入の課題は、コストや水産物を取り扱う事業者の手間が大幅に増えることへの懸念です。
生鮮の水産物で単価の高い魚であれば比較的トレーサビリティに取り組みやすいと考えられますが、水産物の加工品は複雑な流通過程をたどる場合が多いため、加工品のトレーサビリティはハードルが更に高まります。
こうした状況の中で、一律に水産物にトレーサビリティを導入することは、現実的ではないでしょう。
コストや手間の面でのトレーサビリティ導入の課題をどう解決できるのか、費用対効果が十分に生じるのかを検証する必要があります。
現時点での提案としては、以下の3つが考えられます。
第一に、漁獲段階での違反を防止するためには、現場での取締強化や罰則の引き上げを考えるともに、漁獲・水揚げ情報を電子的に報告するための体制を整えること。
既に全国の市場の水揚げ情報をJAFIC(漁業情報サービスセンター)に報告する仕組みは取り組みが進められていますが、情報の標準化や、事業に支障がない範囲での情報の公表、市場外流通の場合にはどう対応するのかなどが引き続き課題です。
第二に、クロマグロのように、漁業現場において違反のインセンティブが高く、流通過程において不正に漁獲された水産物を排除する必要性が高いものについては、トレーサビリティの費用対効果を検証しながら必要な制度を措置すること。
第三に、輸出やブランディングを行いたい事業者が任意にトレーサビリティに取り組もうとする場合に、取り組みを行いやすいように、第一の電子報告制度を活用しながら仕組みを整えること。
一律の制度ではなく、必要な目的に応じて、異なる対策を進めていくことが必要と考えられます。

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