新たな資源管理(科学的根拠に基づく管理、TAC管理の推進など)に対して、漁業者が不安を感じている大きな理由の一つが収入が減少することに対する心配でしょう。
TACによって、漁獲量が制限され、漁獲量が大幅に減少することは、収入が大きく減少することです。資源管理を行うことによって、将来的には漁獲量が増えるとの説明がされても、本当に収入が増えるかどうか確実なことが分からない中で、既に厳しい経営状況の中では、今年、来年の収入を優先したいと考えるのは、ある意味当然とも言えると思います。
多くの漁業者は、漁業収入安定対策事業に参加しているため、収入が減少しても、過去5年の漁獲収入の平均の9割までは、補てんが行われます。(正確には過去5年の漁獲収入のうち最高と最低を除いた3年の平均。)
ただし、一時的な漁獲収入の減少であれば、この収入安定対策でカバーができますが、収入減少が何年も続く場合には、過去5年の平均が下がるために、収入が右肩下がりになってしまいます。
これに対応するためには、資源管理目標を設定する際に、著しく漁獲量が変動しないように緩やかな回復目標を設定することが考えられます。
もう一つは、現実的にはハードルが高いと思われますが、漁獲制限による獲り控えに対して、収入減少分を補てんするような金額を国が先に支払い、将来に収入が増加した際には、増加分の中から返済を求めるスキームを作ることです。
以前にも書きましたが、その場合には、無条件での支払いではなく、魚種ごと、管理区分ごとに、資源回復のシュミレーションや、適正な漁業者数、漁船能力などについて、研究者も交えた議論を行い、将来の資源回復と漁業収入の増加が見込まれ、そのために必要な資源管理の取組や経営の合理化が実施される場合との要件を設定した上で、支援を行うことが重要と考えます。

コメント