4月8日の日本経済新聞にて、Financial Timesの記事を引用する形で、 中国の遠洋漁業漁船による「度を越えた違法な乱獲や絶滅危惧種の大量殺りく、東南アジア人乗組員に対する人権侵害」の疑惑について、報道されていました。
こちらの記事で詳細をご覧いただけますが、中国のマグロ漁船では、1年以上港に寄港しない連続航海の中で、インドネシアの乗組員に対して、24時間を超えるような長時間労働や暴力が繰り返され、休息やまともな食事を与えられない「奴隷労働」の末、病気になっても十分な治療を受けられずに、10名が死亡されたことが報告されています。
更に、この漁船がこうした人権侵害や違法漁業にて漁獲したマグロが、日本に入っていたことも分かっています。
日本の消費者にとっては、何も知らずに安い値段でお得に食べていた魚が、このような形で海外で漁獲されていたかもしれないということになります。
これを防ぐためには、私達が食べている魚(や食品)がどのような形で漁獲されて、どのようなルートで日本に入ってきたのかを確認できるトレーサビリティ制度を導入することが有効です。
ただし、規制の導入には大きなコストと、関係者の業務の増大が伴いますので、よいものだからといって、すぐにトレーサビリティを導入できるかというと、まだハードルが高いようです。
少し高いものであっても、生産履歴がしっかりしたものを買いたいという消費者のニーズが高まることと、単に規制を導入して事業者に負担をかけるのではなく、併せて漁業者や流通業者のメリットになるような仕組みを考えることが必要です。例えば、トレーサビリティによって扱うデータを他のデータと連係しながら活用して操業の効率化や売上の増大に結びつけるなどです。
なお、輸入水産物については、違法・無報告・無許可(IUU)漁業による水産物の流入を防止するため、本年12月からは、対象魚種(さば、さんま、まいわし、いかの4魚種。まぐろは国際機関のルールに基づき別の法律で対応しているために対象外)について、合法に漁獲されたことについての政府の証明書がついていなければ日本に輸入することが出来なくなります。
これは、既に同様の規制を導入しているEUや米国と足並みを揃えて、世界全体でIUU漁業を防止して、適正に漁業を実施している漁業者を守るために、重要な取組です。
一つ論点が挙げられるのは、EUは全魚種を対象としているのに、日本は4魚種であることです。感覚的には日本の4魚種は少ないと感じますが、この点についても、規制(対象魚種)を拡大するためには、それによってコストを上回る効果が生じることを根拠を持って示す必要があり、そうした調査・研究が重要であると考えます。
コメント